ミモリブログ

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海洋散骨をしてきた話

母の遺骨を海洋散骨しようと考えたときに色々と調べて思ったのが、実際にやってみた人の体験記があまりない。と、いうことだった。

ブログでもTwitterでも散骨業者の話がほとんどで「遺族の感想」「いくらくらいで」「どうだった」とかが見つからないのだ。

 

私が友人・知人に「海洋散骨をしてきたんだよね」と言うと「どうだった?」「いくらくらいかかるものなの?」「実は自分も海洋散骨を考えている」と興味をもってもらえることが多かったので忘れないうちにいろいろと書いておくことにする。

なんとなくだけれど女性の方が興味津々で聞いてくれることが多かった。

 

※あくまで私が体験した海洋散骨です。

散骨をする場所により手続きが異なるのでそれをふまえてお読みください。

長文です。

 

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「私が死んだら骨は海に撒いてほしい」母は元気な頃から、よく言っていた。

まだ私が10代で、母が死ぬなんて想像もつかなった頃からだ。

「眠ってるうちにすぅっと死んじゃうのが一番いいよね」これも、元気な頃からよく言ってたことだった。

母は22ヶ月の闘病生活のすえ眠るように息を引き取った。

葬儀の日はものすごい快晴で父も私も母が死んだという実感がなかった。

 

母は遠距離恋愛をへて関西から関東に嫁いできて、父は次男で実家とは疎遠なほうだったと思う。うちは法事や墓参りとはあまり縁のない核家族だった。

父が43歳、母が36歳のときに産まれた私はひとりっこだったし、おそらく同年代の人よりも早いうちから両親と両親の老後について話し合っていたと思う。

 

母の葬儀がおわってから、私は位牌と四十九日の手配と並行して永代供養と海洋散骨のことをたくさん調べた。費用のこととかお寺や業者を選ぶことを考えるのは大変だったし、生前の母の希望をどこまで叶えるべきなのか悩むことが多かった。何より、なにが良いものでなにが悪いものなのかわからなかったのだ。

 

私は、母の希望にそって海洋散骨をしたかったけれど、父をうまく説得できなかった。インターネットで調べた海洋散骨は業者が代理でお骨を預かり散骨をするものが多く「お骨を全部預けて、本当に散骨してもらえるのだろうか? 捨てられたりしないだろうか?」という不安が私にもあった。

 

仏壇の前にある骨壷が父には相当なプレッシャーだったようで、パニックに陥りやすい気質と従来の心配性が相まって、海洋散骨をすると決めるまで「散骨なんかしたら親戚に何か言われないかな? お墓を買うか永代供養がいいんじゃないかな?」と、何度も言っていたのでとても疲れた。考えることが多すぎて私はこの時期は高熱で寝込んだり、貧血で倒れたり、背中を痛めて動けなくなったりして散々だった。

 

四十九日の法要というのは一般的に自宅でやることが多いそうだが、私の実家はどうにも手狭で会場を借りる必要があり葬儀を依頼した業者とは別のSグループを利用することにした。Sグループは地元で幅広く展開している大手葬儀会社で営業所と会場は駅からも近く駐車場もあり、私たちとしてはとても助かった。

 

対応してくれたSグループのスタッフの方はとても丁寧で、四十九日の色々を決めるやりとりの中で「海洋散骨をするかどうか悩んでいて……」とつぶやいた私に「私どもでも海洋散骨をやっております」と、提案してくださった。散骨に悩む父にいろんな方の体験や行程をわかりやすく説明して下さり、「近頃はいろいろな形もありますし、故人様のご希望に沿うのがいいと思いますよ」と言われ、父は海洋散骨をすることに気持ちが落ち着いたようだった。(父は昔から母と私の言うことより、第三者の意見を重んじる)

「葬儀から散骨まで、全部この業者さんにお願いしておけばよかった!」と何度も思ったが、どうにか色々と目処がたってホッとした。

 

Sグループはの海洋散骨は3つのプランから選ぶことができた。

①代理散骨プラン 約90,000円

家族は乗船せず業者さんにお任せするプラン

②家族乗船プラン  約150,000円

家族2名まで乗船をして散骨にいくプラン、同乗する家族がいる場合もある

③プライベートプラン 約300,000円

家族6名まで乗船をして散骨にいくプラン、同乗家族はなし

 

 

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これは②のプランを選んだ私たちが乗船したクルーザー。大きくて、外装も内装も綺麗な船だった。クルーザーはSグループの社長さんの持ち物で運営は関連会社がしているそうだ。 

 

海洋散骨のプランを決めたあとは申し込み書類をいくつか提出した。

お骨というのは、お墓に納骨する際に行政の発行する「埋葬許可証」が必要なのだが、今回の海洋散骨の場合は埋葬許可証のコピーを提出した。

考えた結果、お骨は全てを海に撒くのではなく「ソウルジュエリー」という小物やアクセサリー的なものに分け、手元に残すことにした。あとからお墓を買うことが、もしかしたらあるかもしれないと思ったからだ。ソウルジュエリーのカタログを見ると10,000円程度のものから高価なものまで様々な種類のものがあった。遺灰を人工ダイヤモンドにするものなどは、たいへんに興味深かったが、父と私は仏壇に置く分と母の郷里に分ける分の手頃なソウルジュエリーを手配して、散骨の日取りを決めた。

 

船を出すには色々な準備がいるらしく天候に左右されることや他のご家族とのスケジュール調整も必要で「土日がいい」「月末はさけて」などのざっくりした希望を伝えたあと、2週間ほど前に「この日はいかがですか?」という提案・確認と前日に天候をふまえた決定の連絡がきた。

 

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当日は横浜のぷかり桟橋に現地集合、快晴で葬儀の日を思い出した。

服装は喪服ではなくカジュアルな服装で乗船時は足元が不安定なのでヒールの靴は避けてくださいと言われていたので私も父も旅行に行くような格好で集まった。

ぷかり桟橋で待っていたスタッフの方は水なしで飲める酔い止めをくれたので私はその場で飲み、父は嫌そうにしていたが無理やり飲ませた。

 

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お骨は水溶性の紙袋に入っていて、こんなかんじに置かれていた。

クルーザーにはお茶やコーヒー、お菓子が用意してあり、ソファはふかふかでエアコンが効いていて、おまかせ散骨プランの方のお骨はあったものの同乗家族はおらず貸切状態だった。撮影も自由にどうぞということでテンションが上がった父と私は「すごいね」「綺麗だね」と言い合いながら写真を撮った。

 

 

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綺麗なシャワールームやトイレ、ミニキッチンもついていたクルーザー。

クルーザーの値段を推測する下世話な父と娘。

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沖に向かいながら途中でデッキに出て船長とその息子さんである副船長に「あれは豪華客船の○○ですよ」「いまからレインボーブリッジをくぐります、高さが□メートルもあります」「あれが東京湾アクアライン風の塔、川崎方面ですね」と解説をされて遊覧船に乗っているようで楽しかった。

 

母が元気だった頃はよく家族で温泉旅行にいった。母も父も私も海を見るのが好きで旅先では決まって遊覧船に乗った。私は「お母さんも一緒に来れたらよかったね」と言いかけて何度もこらえた。

本当に旅行に来ているような気持ちになったのだ。

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当初の予定では観音崎を目指したものの台風が接近していた影響で少し違う場所での散骨となった。

散骨ポイントについたら黙祷をして、お骨が入った袋を海に投げて(勢いをつけないとクルーザーにぶつかるので)母が好きだったお酒とお花を撒いて、クルーザーはその場を旋回した。めちゃめちゃ揺れていたので私は撮影はしなかったけれどスタッフの方に記念撮影をしてもらった。

袋はすぐに溶けてお骨は見えなくなったけれど、近くにクラゲが一匹ぷかぷか浮かんでいるのが見えて私は少し泣いた。

 

テンションが上がったり泣いたりした帰りは船酔いで気持ち悪くなった。酔い止めは飲んだのにブラックコーヒーで胃がぐるぐるしたらしい。トイレにいったら気持ち悪さはおさまったけれど、クルーザーのトイレの流し方がわからず流すためのスイッチを見つけたあとも流したものの行方はどうなるんだろう……とぼんやり考えているうちにぷかり桟橋について、最後にクルーザーの前で父と私の写真を撮った。

所要時間は往復で2時間半くらいなのに終わったら気が抜けたのか眠くなって、帰りの電車でたくさん寝て父とお酒を飲みに行った。

 

私は海洋散骨をしてよかったと思う。

父も、はじめは反対だったけれど海洋散骨をしてよかったと言っていた。

私は、お墓参りはしないけれど海に行って母のことを思い出すし、自分の最期も海に撒かれたいと思う。

 

 

 

 

追記

このブログを書いた数日後にSグループのスタッフの方から電話があり、散骨証明書と写真をお渡ししたいのですが……との連絡を受けました。

そういえば、後日もらえるって言ってらっしゃいましたね! と、すっかり忘れていたので、タイミングのよさにビックリしました。


たくさんの方に読んでいただけたようで、感想や体験、Twitterでの拡散など、みなさんありがとうございました。

とても嬉しかったです。